「クロスメディア」の落とし穴
印刷技術協会(JAGAT)を中心に「クロスメディア」という言葉がよく使われています。昔は「ワンソースマルチユース」なんていう夢物語の言葉もよく使われていました。私はどうもこの「クロスメディア」という言葉が好きになれません。というかしっくりこないんです。その理由がハッキリしていなかったのですが、この前に書いた「印刷物のPDCA」を書いている途中でハッキリしてきました。
「印刷物のPDCA」を書いてる途中に、私の手元に一通のFAXが届きました。JAGATからのセミナーの案内です。「印刷会社はクロスメディア・ビジネスにどう取り組むのか」がテーマです。その中身を見ていてハッとしました(決してJAGATさんのセミナーがおかしいというのではなくて、あくまでもヒントになったということです)。クロスメディアと言ったところで、中小の印刷会社にとって印刷物以外で日常的に受注できるのはウェブサイトくらいなものです。ということは極端に言えば、クロスメディア=印刷物+ウェブサイトということになります。なのでクロスメディア・ビジネスと言いながら、実際はウェブの制作体制をどうするか、印刷受注とどう違うかなどの情報やノウハウを提供することがセミナーの主眼となっているようでした。そういえば、私がJAGATの雑誌「プリンターズ・サークル10月号」に寄稿したときも、ウェブ制作部門の人材育成についてが与えられたテーマでした。このテーマはとても大切なことです。でも大切でも大きな「落とし穴」があると思ったのです。
何が「落とし穴」なのか。それはウェブの制作体制やノウハウを獲得したら、それでクロスメディア・ビジネスに参入したかのような錯覚にとらわれるということです。印刷物以外にウェブサイトというものを制作できるようになっただけなのに、新しいステージに立ったような気になってしまうのです。実際に今のうちの会社がそういう状態だと思います。
極端な話、ウェブサイトについては全面的に面倒を見てくれる協力会社が見つかって、そこと強力なパートナーシップを結んだら、印刷会社の方も新しいステージに立てるということになりはしないでしょうか?本当にそうでしょうか?事はそんなに単純なことなのでしょうか?
そもそも「クロスメディア」とは“メディア”が“クロス”するものですが、印刷物がメディアではなく製造物として扱われていたら、他のメディアとクロスすること自体ができないってことになるんじゃないでしょうか?
印刷会社に求められているのは、本業である印刷物をメディアとしてとらえ直してビジネスを再構築することなんじゃないでしょうか?それなしに「クロスメディア」自体が成立しないんじゃないかと思うんです。
印刷物をメディアとして見直した場合、「なぜその印刷物が作成されるのか」「顧客の事業や運動にとって、どういう印刷物が必要なのか」から関わらないといけません。またいったん納品した印刷物も、「実際の効果はどうだったのか」「次に改善すべき点は何なのか」ということにも関わることになります。他のメディアとの融合や連携を考えたり、制作する上での不効率はないのか?なども視野に入れなくてはならないでしょう。
うちの会社でもOCRによる受注集計の業務を委託されていたり、読者データを管理し発送までを一貫して行っているものもあります。でもそれは、今のところ「特殊な仕事」という位置づけになっています。でもこれからは、あらゆる印刷物について、その印刷物のPDCAを考えた提案やサービスの提供が求められてくると思うんです。
「クロスメディア」と言った場合、まずは印刷物をメディアとして見つめ直しビジネスを再構築することが必要で、決してウェブサイトやアプリケーションの制作や開発ができれば、それで「クロスメディア」が実現した事にはならないということを肝に銘じておく必要があると思っています。

ごぶさたしています
goriさんの書かれている内容は、自分が最近悩んでいる内容とドンピシャ!!でした。
制作単価や印刷単価の下落だけでなく、受注量全体の縮小傾向にある中、どうすれば利益のある仕事が取れるか?
制作や印刷とミックスした+αの仕事をどうやって取ればいいのか?
とりあえず考えられる事としてはホームページやデータベース化等の事しか考えられず悩み続けています。
「印刷会社のできる仕事」で考えては仕事は先細りですよね...
goriさんの書かれた事をよく読み返して、また考えていきたいと思います。
貴重なご意見ありがとうございました。
はじめまして。
大阪で印刷会社でgoriさんと同じような仕事をしているシモヤマと言います。
>印刷会社に求められているのは、本業である印刷物をメディアとしてとらえ直してビジネスを再構築することなんじゃないでしょうか?それなしに「クロスメディア」自体が成立しないんじゃないかと思うんです。
まさに私が感じていた問題意識そのままで感激しました。
他のエントリーも(全部ではないですが)読ませていただきました。
とても勇気づけられました。ありがとうございます。